指導で最も大切にしている「気持ち」
そろばんを指導するうえで、最も大切なのは「気持ち」だと思っています。
これは、そろばんに限ったことではありません。ほかの習い事でも、勉強でも同じです。
「好きだから、できるようになる」のか。「できるようになったから、好きになる」のか。
そして、思うようにできなかったときに感じる「悔しい」という気持ち。
この「好き」「できる」「悔しい」という気持ちの、何とも言えないバランスやタイミングが、物事に夢中になるきっかけになるのではないかと思っています。
私自身、まだ明確な答えを見つけられたわけではありません。子どもたち一人ひとりと向き合いながら、今も日々模索していることの一つです。
結果が出ない時期を乗り越えて
現在、当塾で最も高い成績を残している奈良優杜くんにも、つらい時期がありました。
小学生の頃は、一生懸命練習しても思うような結果が出ず、何度も「辞めたい」と思ったそうです。それでも、途中で逃げ出さずに練習を続けました。
そのときの頑張りが、中学生以降の成績につながっているのだと思います。
本人も今では、
「あのとき頑張っていてよかった」「もっとたくさんの全国大会に出場したい」
と話し、日々の練習に励んでいます。
以前は嫌いだったことが、できるようになることで好きになることもあります。だからこそ、今の気持ちだけで判断するのではなく、その子の少し先の成長を考えて、時には厳しく指導することも必要だと思っています。
本人の気持ちが向いていないとき
一方で、どうしてもそろばんに気持ちが向かない時期もあります。
そのようなときに、ただ途中で投げ出すのではなく、何か一つ目標を決め、それを達成してから卒業することも大切だと考えています。
たとえば、
「次の検定まで頑張る」「今取り組んでいる級を終わらせる」「大会に一度挑戦してみる」
など、目標は一人ひとり違って構いません。
ただし、指導者が「大会に出てほしい」と思っていても、本人が「出たくない」と言っている場合、私は無理に説得して出場させることはしません。
本人に挑戦したいという気持ちがないまま出場させても、その経験が本当にその子のためになるとは限らないからです。
もちろん、「出場したくない」と言われれば、指導者として残念な気持ちはあります。しかし、それは大人があれこれ言って変えさせるものではありません。
日々の練習や周りの仲間の姿を通して、本人が自分から「挑戦してみたい」と思えるようにすること。それが指導者の役割だと思っています。
大切なのは、一つの区切りまでやり遂げること
大会で優勝することだけが、すごいのではありません。高い段位を取得することだけが、価値のあることでもありません。
もちろん、優勝や段位取得は素晴らしい結果です。しかし、それ以上に大切なのは、それぞれの子どもが自分なりに決めた一つの目標に向かい、最後までやり遂げることだと思います。
ただ何となく辞めるのと、一つの目標を達成し、区切りをつけて卒業するのとでは、その後に残る気持ちが大きく違います。
「最後まで頑張れた」「自分で決めたところまでやり遂げた」
その経験は、そろばんを離れたあとも、勉強や部活動、仕事など、さまざまな場面で子どもたちを支えてくれるはずです。
子どもの気持ちに目を向ける
保護者も指導者も、子どもを大切に思う気持ちは同じです。厳しく言うことも、続けさせようとすることも、その子の将来を思ってのことでしょう。
しかし、その思いが強くなるほど、子ども本人が今どのような気持ちでいるのかを、見落としてしまうことがあります。
今は少し苦しいだけなのか。できないことが悔しいのか。本当に気持ちが離れているのか。それとも、誰かに頑張りを認めてもらいたいのか。
同じ「辞めたい」という言葉でも、その背景にある気持ちは一人ひとり違います。
だからこそ、すぐに続けるか辞めるかを決めるのではなく、まずは子どもの気持ちに耳を傾けることが大切なのではないでしょうか。
厳しく背中を押すべきときと、立ち止まって気持ちを受け止めるべきとき。その判断は簡単ではありません。
私自身も、子どもたちにとって何が一番良いのかを考えながら、これからも一人ひとりの「気持ち」と向き合い、日々の指導を続けていきたいと思います。
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